「こばと」191号
≪札幌分会のボウリング大会お食事会≫
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新しい出生前診断(NIPT)について理解を深めるために
ぜひお読みください!!
11月29日、北海道で新しい出生前診断の臨床研究への参加を検討している北大、医大の担当の先生と札幌在住の役員で、話し合いの場を持つ事が出来ました。
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母体血中cell-free 胎児DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査
(Non Invasive Prenatal Genetic Testing: NIPT)について
北海道大学病院産科/臨床遺伝子診療部助教
山田崇弘
北海道小鳩会会員の皆様初めまして.北海道大学病院産科/臨床遺伝子診療部の山田崇弘と申します.この度小鳩会会長の三好明子様に会報に執筆する機会をいただきました.私は北海道大学病院で産科医(周産期医学の専門医)として,あるいは臨床遺伝専門医として働いています.特に臨床遺伝と遺伝カウンセリングや出生前診断を専門としております.ご存知のように昨年夏にセンセーショナルな記事がある全国紙に掲載されたことをきっかけに出生前診断について注目が集まりました.これは一昨年米国で開始された「母体血中cell-free 胎児DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(Non Invasive Prenatal Genetic Testing: NIPT)」の日本国内への導入に関する記事でした.しかし報道の内容はセンセーショナルなだけではなく不正確な部分も多く,小鳩会の皆様を始め多くの方々を不安にさせてしまう誤解の多いものでした.昨年秋に三好様にご連絡をいただき,小鳩会の数名の皆様とNIPTについてお話しする機会をいただきました.その際に,お話しさせていただく中で正しく私たちの意図が伝わらずご心配をおかけしている点が数多くあることを実感致しました.そこで僭越ではありますが筆を執った次第です. まず今回話題になった「母体血中cell-free 胎児DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(Non Invasive Prenatal Genetic Testing: NIPT)」についてご説明させていただきたいと思います.胎児の染色体や遺伝子を検査するためには,羊水穿刺や絨毛採取などにより胎児細胞を直接採取して検査することが必要です.しかしこれらの方法では1%未満ですが流産の危険性があります.またごくまれですが,腸管損傷や感染などの母体合併症などもおこることから,危険性をともなわない無侵襲的な胎児遺伝学的検査法の開発が期待されてきました. 誰の血液の中にも自分のDNA断片が必ずあるのですが,妊娠中のお母さんの血液の中には妊娠の初期からおなかの中にいる赤ちゃんのDNAの断片(cell-free 胎児DNA)がとけ込んできます.お母さんの採血を行って,そのcell-free 胎児DNAを解析することで赤ちゃんには全く危険を与えずに赤ちゃんの情報を得る事が可能であることが1997年に香港のDenis Loらによって世界で初めて報告されました.これが「母体血中cell-free 胎児DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(Non Invasive Prenatal Genetic Testing: NIPT)」の始まりです.胎児由来のcell-free DNAは母体血液中のDNA断片の約10%を占めています.母体血液中のDNA断片をすべて集め,それらの配列を高性能のDNA解析装置で全て読み取り,各々のDNA断片が何番染色体に由来しているかを調べていきます.そして各染色体に由来するDNA断片の量が,どの程度変化しているかから,胎児の21トリソミー,18トリソミー,13トリソミーの診断を行う方法が開発されました(母体血中cell-free DNA胎児染色体検査.Massively Parallel Sequencing: MPS法).この方法では確定診断にはならないものの,検査の精度は非常に高く,21トリソミーの場合では感度99.1%,特異度99.9%,18トリソミーの場合では感度100%,特異度99.6%,13トリソミーの場合では感度91.7%,特異度99.7%と報告されています.ただ,ここで注意しなければならないことがあります.実際の診療においてもっとも重要となるのは,検査陽性者のなかで実際に胎児が21トリソミーである確率(陽性的中率),検査陰性者のなかで胎児が21トリソミーではない確率(陰性的中率)です.陽性的中率は母集団の罹患率(いわゆるハイリスク群かローリスク群か)によって変化し,1/100(妊婦年齢では38歳相当)では90%以上ですが,1/300(35歳相当)では75%,一般頻度の1/900では30%程度になることに注意が必要です.逆に陰性的中率は母集団によってもあまり変化がなく,100%に近い精度となります.すなわち,もしこの検査で陰性を示したとき胎児は21トリソミーではないとほぼ考えることができますが,陽性のときは侵襲的検査(羊水穿刺または絨毛採取)によらなければ確定診断とはなりません. NIPTは母体からの採血によるものであり,母体と胎児ともにほとんど侵襲がないため,検査結果が陰性であった場合には,これまで行われてきた羊水穿刺や絨毛採取などの検査を回避して,流産といった検査に関連した合併症を減らすメリットがあります.これがこの検査の最大の利点です.またこの検査の限界としては,判定保留(Not Informative)という結果が1〜2%にあること,また21トリソミー,18トリソミー,13トリソミーの3種類の染色体異常しか対象ではないことなどがあげられます.すなわち3種類の染色体(21番、18番、13番染色体)の数の違いを検出するもので,均衡型転座,微細欠失などの構造異常や染色体モザイクなどは対象外となります. 実際のNIPTの出生前染色体検査における位置づけは次のようになります.出生前染色体検査には羊水検査や絨毛検査といった確定的検査と母体血清マーカー,超音波検査といった確率を評価する目的で行われる非確定的検査があります.今回のNIPTはこの非確定的検査に含まれます.しかし,これまでの非確定的検査と比較して感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率全てにわたって上記のように上回る精度をもっているのが特徴ということになります. 米国で始まったNIPTは現時点では上述のように3種類の染色体(21番、18番、13番染色体)の数の違いを検出するものですが,近い将来には既に研究段階で始まっている特定の遺伝子を検査したり多くの遺伝子を網羅的に検査したりする方法が現実になる可能性があります. さて,このNIPTは1997年の報告以来,研究は急速に進み,一昨年(2011年)の秋からは米国で本検査による胎児染色体検査が研究ではなく病院で行われる通常の検査(一般臨床)として開始されました.それに応じて国際出生前診断学会(ISPD)からその取り扱いに対する緊急声明が出され(表1),米国のみでなく世界中から検査が受注されるようになりました. 現在の様なグローバルな社会では日本も例外ではなく,NIPTの日本への導入は不可避な状況にあると考えられます.しかし,日本の出生前診断は1990年代の母体血清マーカー検査の導入時に大きな社会問題となり,未だに社会的なコンセンサスが得られていません.この状況で不充分な遺伝カウンセリング体制のもとで検査が開始されると再び多くの混乱を生む事が懸念されました.このことにいち早く気づいた産婦人科専門医かつ臨床遺伝専門医たちは昨年(2012年)春に行われた日本産科婦人科学会の際に会議を行いNIPTについて話し合いを行いました.当然現在のような状況で導入された場合の混乱を予想し議論が百出しましたが良い解決法はこの時点ではまとまりませんでした.また,日本産科婦人科学会などの学会や公的機関が積極的に動く気配もここまではありませんでした.しかし,この議論をきっかけに産婦人科専門医かつ臨床遺伝専門医の有志が集まり適切な方法を探るべく「NIPTコンソーシアム」という組織を作ってきちんとした体制での導入を目指そうという話が進んで参りました.そこで,昨年7月に大宮で行われた日本周産期新生児医学会の際に北大を含む12施設の代表があつまってNIPTコンソーシアム準備会が行われ,次の様なことを基本として考えて行くこととなりました.第一にこの検査は無侵襲であるという特徴を持つ一方で採血のみという簡易な手技である為,放っておくとマススクリーニングとして一般化することや安易に行われてしまう危険があります.第二に現時点の日本においては遺伝カウンセリング体制がどこの医療機関においても整備されているとは言えず適切な遺伝カウンセリングを提供出来る条件を作る必要があります.そして第三に染色体起因障がい児を産むという選択をサポートする体制を担保した上で導入しなくてはならなりません.そしてこういった問題を懸念し,解決して行く為には一足飛びに諸外国のように一般臨床として導入するのではなく本検査に関する適切な遺伝カウンセリングとその実際を透明化して検討するための臨床研究として本検査を導入して行くことを考えました. これまで日本においては,出生前診断に関してしっかり議論されてこなかったという現状があります.1980年代にきちんとした議論や倫理的検討がないままに広く普及してしまった羊水染色体検査が既成事実化してしまったり,一方では議論することそのものがタブーになってしまっていたような側面もありました.また,日本において人工妊娠中絶を規定しているのは刑法における堕胎罪と母体保護法ですが,この中には胎児の先天異常を理由にした人工妊娠中絶(いわゆる胎児条項による人工妊娠中絶)は記載されていません.しかし,現実には「妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの(母体保護法第14条第1項第1号まま)」のうち「経済的理由」を適用して行われています.この点についても度々議論に上ったことはあってもきちんとした結論が出ないままに来てしまっています. いずれにしてもここまできちんとした議論をせずに先送りにして来てしまった結果,日本は出生前診断に関して明確な立場を示せていないのです. まず,NIPTコンソーシアムではNIPT検査実施のための施設条件として以下の6点をすべて満たすことを定めました. 1. 出生前診断に精通した臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが複数名所属し,専門外来を設置して診療している この施設条件のなかでは,臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーが複数名所属と,小児科の臨床遺伝専門医と連携というふたつの条件が,もともと真剣に遺伝医療に取り組んできた施設のみを限定する実質的なハードルとなっています.興味や思いつきでNIPTを導入しようとしても,臨床遺伝専門医を新たに雇用したり,所属医師のなかから複数の遺伝専門医を養成するにも一朝一夕ではいかないからです.これらの施設条件を満たす医療機関は全国でも30-40施設といったところと考えられます. またNIPT検査は誰でも受けられる訳ではありません.希望する妊婦さんのうち,以下の条件をすべて満たす方が検査対象となることと致しました. 1. 妊娠10週以降であること これらの条件は,日本産科婦人科学会から既に出されている「出生前に行われる検査および診断に関する見解」に完全にしたがったものです.羊水検査などの条件と同じであるため,前述したように陰性的中率の高いNIPTを行うことで合併症としての流産を少なくしようとする意図にも沿っています. NIPTは,ハイリスク群(上記の対象者に関する条件2のように確率が高いとされている場合)においては高い精度で胎児がトリソミーをもっているか検出できることがわかっています.しかし周知のとおり確定診断としては不十分であり,これまでと同様の羊水検査などが必要となってきます.一方,ローリスク群(不安を感じている若い方など)に対する研究報告はまだないので,この検査の有効性はわかっていません.検査対象をハイリスク群に限定しているのはこの理由もあります.これはアメリカ産婦人科学会(2012年12月に見解発表)なども同じ見解です. NIPTコンソーシアムでは数回の検討を経たうえで,2012年9月から試行として首都圏の複数施設で検査を開始し,その3-6か月後をめどに全国の他施設に拡大していくことを予定としていました.検査の位置づけとして,臨床研究として実施するか保険診療外医療の提供とするかについてもかなり議論がなされました.結論としては上記のように臨床研究として開始し,施設条件を厳格にするという方針で行うこととしました.そして,そのような準備を進めていた中で突然8月29日に前述したセンセーショナルな報道がなされたのです. この報道では,検査の簡便さの強調と安易な中絶につながりかねないといった論調で,あたかも妊婦健診のように妊娠したら誰もが受ける様な検査で,それも実際の染色体検査の結果がほぼ確実にわかる様な書き方だったので大混乱を生みました.また,この検査の問題点を憂慮して,きちんとした体制をつくろうとしたNIPTコンソーシアムがあたかもNIPTを推進しようとしている様に受け取られかねない内容でした.しかし,私たちの意図はそのようなものではないのです.今回の報道の後にあった批判では「新型出生前診断」は「命の選別,胎児のふるいわけではないのか?」「この検査ではたして安心して産めることになるのか?」といったものがありました.しかし,これらは実はNIPTの問題ではなく出生前診断そのものがもつ問題であるはずなのです.前述したようにこういった問題がこれまできちんと話し合われなかったからNIPTで注目が集まった今,問題が噴出したと考えるべきなのです.そして「見切り発車ではないのか?」「この検査のせいで中絶が増えるのではないのか?」といった批判はセンセーショナルな報道とこれまでの日本における遺伝に関する教育と理解が不足している為に正しい情報が伝わらず誤解にまみれてしまったことによると考えています. 日本では既に述べたように1980年代に羊水染色体検査が普及しました.当時は遺伝カウンセリングの考え方もまだ一般的ではありませんでしたし,遺伝情報の取り扱いの規定もありませんでした.遺伝カウンセリングなしに検査の危険性だけのインフォームドコンセントだけで数多くの検査が行われて来ました.少しずつ改善はされていますが,まだまだ遺伝カウンセリングが出来ていない場合が多いのが現状といわざるを得ません.実際,北海道で検査前に時間をかけた遺伝カウンセリングを行っている施設はごく少数です.羊水染色体検査を受けるかどうかを考える為の情報(非確定的遺伝学的検査)として母体血清マーカーや胎児項部透亮像(Nuchal translucency: NT)計測といったものがありますが,母体血清マーカー検査を遺伝カウンセリングなしにパンフレットを配っただけで行ったり,NTでは何も説明せずに全例で測定したりしている場合さえあります. このような状況だからこそ,私たちは次のように考えています. NIPTが国内に入る事(絶対に防げないし,たとえ表面的に行わなくても法規制でもしない限りアンダーグラウンドで広まる)をきっかけにきちんとした体制で 1.これまでの非確定的検査と比較して格段に精度の良いNIPTを慎重に扱うのはもちろん,出生前診断のありかたそのものを考え直したい. ですから,もし批判するとすればNIPTそのものではなく,これまでなされて来た日本の出生前診断の現状が対象のはずで,今回注目されたことをきちんとした出生前診断の形を作るきっかけにしなければならないと考えています.今,この動きを止めてしまったら日本の出生前診断は再び逆戻りし,アンダーグラウンドだけが広がってしまい,取り返しのつかないことになると思っています. 遺伝学とは継承と多様性の学問であるとされています.これまで日本での遺伝教育は系統だってなされなかっただけではなく継承に重きをおいたもので多様性についてはあまり強調されてきませんでした.この点が日本の遺伝リテラシーの不足している原因の一つであると私は考えています.社会の中では様々な立場の人が様々な価値観をもって生きていることを認めること.決して障がいをもっていることは不幸なことではないことを知ること.障がいを持っていることが生きづらさに繋がる様な社会であってはならないこと.出生前診断を受けることを選択する人も選択しない人もいることを認めること.そしてその結果どちらを選択しても社会的不利益を受けないよう,国や社会は全力で支援することが必要です.「産むことを選択した」家族のために,各種の福祉,社会対策やノーマライゼーション政策の実施が求められます.障がい者が排除されるのではないかという不安のもとでは,どのような出生前検査も障がいを持って生活している方や家族を始め,国民に受け入れられるはずはありません.NIPTの導入を契機として,「すべての障がい者が安心して生活できる社会」をつくっていくという社会の姿勢が求められると私たちは考えています. NIPTについては日本産科婦人科学会が2012年12月15日に「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(案)」を出しました.そしてこれに対するパブリックコメントが募集され2013年2月21日に締切られ,検討が行われた後に2013年3月9日に指針(案)の改訂版が公開される見込みです.パブリックコメントに寄せられた意見には,選択的中絶による生命の選別を認めない立場,あるいはマススクリーニングとなることによって優生社会化することを危惧する立場からのNIPT批判,一方では希望によって妊婦が検査を自由に受ける権利を保障せよ,非侵襲的検査なのだから遺伝専門医に限らず広く一般に検査を認めよというNIPT自由化の主張もあるようです.日本産科婦人科学会がどのような改定案を出すのか私たちは注目していますが,NIPTコンソーシアムはぶれることなく理念を持って進めて行きたいと考えています. これからも私たちは皆様の声に真摯に耳を傾けながら出生前診断に取り組んで行こうと思っております.そして今後も北大と札幌医大とで連携協力して北海道におけるNIPTが適切に行われるように致します.忌憚のないご意見をいただけます様今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます. 2013年2月13日
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北見分会からの報告
クリスマス会
食事の前には“マジックショー”が行われました。マジシャンの方は、目の前で鮮やかな手さばきで皆を楽しませてくれました。「趣味」の枠を超え、素晴らしかったです。最後はなんと!!!本物の鳩が!!!(小鳩会ということもあり!)マジックショーが終わると、バイキング形式での会食会。テーブルに乗りきらない程のお料理が並びました。どれも美味しかったです。食べ終わると、お楽しみのサンタさんからのプレゼントが!!!サンタさんに興味津々でついて離れない子、少し恥ずかしがりながらプレゼントをもらう子、びっくりして固まる子など様々でしたが、皆とてもうれしそうな表情でした。
(記: 八巻) |
函館分会からの報告
「新年親子の集い」を終えて
(記: 櫻井) |
「なごやかな親と子の集い」
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I 省一さん(S52.12.23)から感想をいただきました
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釧路分会からの報告
茶話会の報告
(記: 若松) |
クリスマス会に参加して
(記: 門脇) |
帯広分会からの報告
クリスマス会の報告
(記: 田村) |
クリスマス会の感想 帯広市 Y 明美(侑樹 H3.11.19)
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札幌分会からの報告
第3回 茶話会
(記:小野寺) |
クリスマス会
( 記: 三好) |
「あっぱれ」のみなさん |
「ヒップフレンズ」のみなさん |
ボウリング大会
(記: 小野寺) |
ボウリング大会成人男子1位
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M 智宏さん(S51.5.7)から感想をいただきました
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最年少参加
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外木先生 医療講演会
(記: 三好) |
ご寄附をいただきました
昨年同様、今年度も「札幌信用金庫福祉基金様」(7万円) 「ほくでんアソシエ基金様」(5万円)「岡本佳子授産研究所様」(ご寄附いただいたカレンダーの売上金)よりご寄附をいただきました。
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