「こばと」234号


表紙の写真//会報「こばと」表紙写真のエピソードをご紹介

苫小牧市 N 敏子さん(いつかさん 1988.6.13)

ミルクをあげたり、抱っこをしたり、お世話が大好きです。いつの間にか、
姪っこ 2人のおばさん!いえいえ、お姉さんです。

特集記事//会報「こばと」今号の特集記事

特集 視覚障がいのあるダウン症のお子さんの盲学校・視覚支援学校への就学について

帯広盲学校の教育


北海道帯広盲学校校長 井上 敬


教育目標


・進んで学び、自ら行動する子
・明るく、思いやりのある子
・豊かに心を伝える子


 盲学校・視覚支援学校は、全盲のお子さんだけではなく、眼鏡をかけても両眼の視力がおよそ0.3に満たない子、その他何らかの見えにくさのある子も入学することができます。(※1)


 本校にも弱視を合併するダウン症の子どもたちが在籍しており、視覚障がい教育の専門性を生かし、お子さんの見え方の状態や学力等に応じた特別支援教育を行っています。


 文字の読み書きや計算などの学習では、机に目を近づけるため前屈み姿勢となりやすく、首や背中に負担がかかりやすくなります。予防の例として、体に負担の少ない姿勢で学べるよう、書見台を使います。最近は、タブレットを使ってこれらの学習を行うことが増えてきました。文字などを自分で拡大して見やすい大きさにしたり、音声を聞きながら学習したり、指で線をなぞったりして使用しています。


写真1 タブレットの活用(算数)


 体育や図工などは、見えにくさに配慮し、怪我防止に注意を払いながら行います。空間(どこに何があるのか)と時間(どのような活動をいつ行うのか)について、最初に伝えて見通しを持たせることで子供が自ら進んで学習できる配慮を行います。


写真2 ボウリング(体育)


 見えにくいために、学習意欲がもてない、なかなか習得できない、誤って理解している、などの状態があるかもしれません。本校では、お子さんの視力の状態を考慮した教材の提供、理解を助ける丁寧な言葉掛け、見る力やボディイメージ等を高めるための指導を行います。


 将来の社会生活を見据え、必要となる基礎・基本的な知識・技術や経験を無理なく積み重ね、自信を高める指導を大切にしています。自己管理・自己選択・自己決定、成功経験から学ぶ、などを重視しています。


 現在、盲学校の児童生徒数が少ないため、静かでゆとりのある教室で学習に取り組んでいます。


写真3 学習の流れを電子黒板で確認


帯広盲学校の地域支援


 本校の校区は広大で、十勝・釧路・根室地方の全域と、オホーツクと上川の一部です。(※1) 本校では校区の市町村及び地域の学校と連携し、視覚障がいのある乳幼児または学齢児の相談や支援を行っています。


 視覚の発達は小学校低学年頃までに完成に近づくため、屈折異常などの異常は早期に治療を開始しなければ、その後の良好な視力が得にくくなると言われています。ところが、弱視の原因となる異常は発見が難しく、見逃されやすいのが現状です。


 今年度、乳幼児の弱視や斜視の早期発見に役立つ器機(スポット・ビジョンスクリーナー)を導入しました。子どもに負担なく目の異常を検出することができ、精密検査や早期治療につなげることができます。眼科医や地域の保健師などと一層連携を深め、視覚に障がいのある子どもたちに本校の専門的支援をいち早く届けることを目指しています。


写真4 スポット・ビジョンスクリーナー研修


 学校説明会は年1回 8月に行っておりますが、小グループでの学校見学も受け付けておりますので、事前にお電話でお問い合わせください。(※3)


 教育相談は、入学希望の有無にかかわらず随時受け付けており、視力検査を行い、学習方法や日常生活場面での配慮などについて助言を行います。


※1 矯正視力が0.5程度までの子であっても詳しい検査で入学対象となる場合があります。入学希望の方は、まず教育相談をお申し込みください。在籍校(園)または直接本校にご連絡ください。
※2 遠隔地の方も学べるよう、寄宿舎があります。
※3 新型コロナウイルス感染拡大状況によっては、例年とは時期及び方法が変わる場合があります。


北海道帯広盲学校 電話0155(37)2028
ホームページURL : http://www.obihiro-sb.hokkaido-c.ed.jp/

寄稿 言葉が遅れる原因の一つ

※札幌で早期療育に長年携わっていらっしゃる伊澤様より、アドバイスを頂きました。
参考にしてください。

「子どもをのびのび育てる」


NPO法人 療育教室 楽しい広場 代表 伊澤崇弥


 私はNPO法人 療育教室 楽しい広場の代表をしております、伊澤崇弥と申します。平成19年(2009年)4月より、NPO法人 療育教室 楽しい広場を設立し、主に幼児期の子どもさんの早期療育に関する発達相談や言葉の指導、あるいはセミナーの開催などの事業を行っております。


 療育教室 楽しい広場での早期療育の基本的な考え方や方法論を「発達療育」と呼んでいます。その「発達療育」では、言葉の遅れなどの発達の遅れやかんしゃく・他動などの問題行動などの子どもさんの発達の不安に対し、個々の子どもさんの発達の実態(発達段階とそれまでの生活経験の仕方)を把握し、それを基に発達の不安の原因が「本来必要であった何らかの生活経験が不十分であったのではないか?」という観点から原因を考え、改善の方法を明らかにして療育を行っています。


 その「発達療育」の考え方を基にして、この北海道小鳩会の会報で、子どもさんの発達および発達の不安の原因や改善の方法などについて、書き記して参りたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 さて今回は『言葉が遅れる原因の一つ「子どもをのびのび育てる」』がテーマです。


 子どもさんが生まれ、乳児からハイハイをし、座位がとれ、立つことができ、歩き始めると「幼児期」に入っていきます。やはり、子どもさんを見るとかわいいし、これから元気に明るくのびのびと育ってほしいと、親御さんとしては願うでしょう。そう願うのはもちろん悪いことではありません。ただ、そのときに陥りやすい問題点があります。


 それは、子どもさんが「のびのびと明るい子でいてほしい」と願うあまり「のびのび育てる」ことを「子どもさんの要求や意図に沿って育てる」と考えてしまう場合です。


 例えば、子どもさんが毎日気持ちよく、元気に、喜びがたくさんあるように過ごしてほしい、あるいはいつも子どもさんの笑顔を見ていたいと親御さんが願い、「子どもが嫌がることをしないように育てよう」と考えるかもしれません。しかし、子どもさんが成長し、生活の範囲が広くなると、子どもさんの要求とお母さんの都合が一致しない場面がたくさん出てきます。


 具体的に考えてみます。公園で遊んでいて、お母さんは「もう時間だから帰らなくてはならない」と子どもさんに伝え、でも子どもさんは「まだ遊びたい」というとき、お母さんの考えと子どもさんの要求が不一致になります。これは特別なことではなく、どの子どもさんにも当てはまることです。ただ、もしここでお母さんが「子どもをのびのび育てよう」として、「子どもが嫌がることをしないようにする」と考えたら、子どもさんの事を最優先に考え、子どもさんが飽きるまでそのまま遊ばせるかもしれません。


 あるいは、おうちでそろそろ夕食の準備をしなければならないときでも、子どもさんが「一緒に遊んで」と要求したとします。ここでも、お母さんが子どもさんの願いに寄り添おうとして、無理をしてでも夕食作りを止め、子どもさんが飽きるまで遊ぶ、と言うことがあるかもしれません。両方のケースとも、療育教室 楽しい広場の発達相談のケースで何例かありました。


 こういう場合、通常「もうみんな帰ってくるからおうちに帰るよ」とか「今はご飯を作るからちょっと待ってね」とおかあさんに言われて、子どもさんが我慢をしたり、待ったりするようになっていきます。最初は遊びたいとだだをこねていた子どもさんも、何度も繰り返していくうちに、諦めていきます。


 しかし、ここで子どもさんに不快な思いはさせたくないと考え、子どもさんに我慢をさせたり、待つという「自分を抑える経験」をさせず、自分の思い通りにさせることを続けていくと、3才くらいになると二つの発達の不安が出てくる可能性が高くなります。


 一つは、「自分を抑える経験」をしていないので、前号で説明をいたしました「自分の行動をコントロールする力」である「自律性」が伸びず、かんしゃくや多動などの問題行動が現れやすくなります。


 そしてもう一つは「言葉が遅い」ということです。なぜ、「言葉が遅くなるのか?」を考えてみますと、自分が嫌なことをしなくていいということは、毎日の生活の中で「自分をさえぎるもの」がなく、お母さんが自分を不快にさせないようにいろいろ先回りしてやってくれているので、そういう中では「しゃべる必要がない」ということになります。


 療育教室 楽しい広場の発達療育では、お母さんを中心とした大人とのかかわりの中で、声や動作、しぐさ、視線、表情などの言葉以外のいろいろな手段を使って、自分の感情や思いや意図を「伝え合う」ことを積み重ね、その延長上に「言葉で伝える」つまり「しゃべる」と言うことが出来てくると考えています。


 そう考えると、毎日の生活の中で「しゃべる必要がない」とすれば「伝え合う」という経験が極めて少ないのですから、当然、「言葉が遅れる」可能性が高い、ということになります。


 このような「のびのび育てる」子育ての中で、発達の不安が出てきた場合は、お母さんが子どもさんと一緒に遊ぶ中で、あるいは着替えや食事などの一日の生活の中のそれぞれの場面で、「ちょっと待つ」「少し我慢する」あるいは「自分でできることは自分でする」という経験を増やしていくことが必要と考えます。


 「しゃべること」に関して言えば、今までとは違い、嫌が上でも「言葉で伝える」場面が増えてきますから、その結果「しゃべる必要」が出てくると考えます。

前号に引き続き、『ダウン症の生涯を通しての健康管理について』連載です。
今月号は外木先生の"青年期から成人期のメンタルヘルスにかかわる問題"についてです。

ダウン症の生涯を通しての健康管理について―20

天使病院小児科医師 外木秀文


V 青年期


パート3 青年期から成人期にかけての精神的問題


1 ストレスが招くうつ状態


 「一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに,眠れない,食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ,日常生活に大きな支障が生じている場合,うつ病の可能性があります.うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に,脳がうまく働かなくなっている状態です.また,うつ病になると,ものの見方や考え方が否定的になります.」この記載は,厚労省のホームページにあるうつ病の解説の最初のパラグラフです.長谷川先生監訳「ダウン症のある成人に役立つメンタルヘルスハンドブック」によれば,ダウン症のある成人に見られるうつ病の症状は,①悲しみや不安感,100%  ②無気力・活動への興味喪失・ひきこもり100% ③行動が遅くなること83% ④エネルギーの喪失感・過剰な疲労感78% ⑤いらだたしい気分や気分の変わりやすさ78% ⑥集中力・課題達成の喪失74% ⑦身辺自立の喪失71% ⑧睡眠習慣の変化71% ⑨食習慣の変化65%となっています.ダウン症のある成人でこのような症状が数週間以上継続すればうつ病の可能性があると考えるべきとされています.このような症状を自ら訴えて受診行動をとることはあまり期待できないので,保護者や支援者が病院受診に踏み切ることになります.また,症状も,本人の口から聞き出すことは必ずしも容易ではないので,周囲の方々の見方に頼らざるを得ません.それにしてもどうでしょうか?前回にお話した「急激退行」とそっくりですね.うつ病の診断は,専門医による診断が重要ですが,認知面に問題を抱える場合はなかなかそれも思うに任せないこともあります.ですから,まずはかかりつけの先生などと相談するのが良いと思います.うつ病はある統計では20%くらいの人が生涯に一度はなるとも言われています.決して稀な病気ではありません.急激退行と区別がつきづらいので,逆に無理に区別することなく考えていくのが良いと思います.


 原因としては,①心の負担となるストレスの存在,②身体の疾患,③脳の問題の3つがあり,ダウン症があるなしで変わりありません.ストレスは例えば,家族との別離,不愉快に感じる人間関係,他人による傷つけれる態度や言動,環境の変化,期待に応えられない経験などでしょうか.身体の疾患としては甲状腺機能低下の他,関節炎や胃腸障害などがあります.脳の問題としては神経の活動に重要な神経伝達物質の1つであるセロトニンの減少が1つの原因と言われています.まずはかかりつけ医に相談することが大事です.


2 認知レベルと自尊心


 ダウン症のある成人の知的レベルは4-11歳程度と幅があります.自分と他人を比較して,自分が劣っていることを感じ,そして自身がダウン症を持っていることをそれなりに理解し,自尊心を持てるようになるのが,青年期から成人期にかけての頃といわれています.さて,「私だってやれるんだ」と意気込んだところでそのプライドを傷つけれる経験をしたらどうでしょう.実際に日常スキルや会話力も高いために「君ならできるから頑張って」と励まされたのに,期待に応えられない状況になった場合の心痛は想像できますか?このようなストレスを適切に表現できないこともあるでしょう.気分が落ち込んでいるように見えたり,前節で論じたうつ/退行の症状が出るようであれば,まずは本人をサポートする支援が必要だと思います.環境を変えられるのであればそうしてみることも一つです.本人の自己否定感や無力感があるなら考え方をポジティブに変えるよう助言することもできるでしょう.精神の専門家にコンサルトできれば一番ですが,心理カウンセラーのカウンセリングを受けることもいいと思います.最近は良いお薬もあるので,医師とよく相談して投薬を受ける必要がある場合もあります.


 さて,うつ病だけが心の病ではありませんが,すこし,ダウン症のある人に良く見られる行動や感じ方考えかたを理解すると,心の病と思ってもそうでないと安心できることがあるのでいくつか例を挙げてみましょう.


3 短期記憶が苦手である.


 人から言われた電話番号をその通りに書き写したり,伝言ゲームで言葉を次の人に正しく伝えるようなときに必要な,「聞いたことや見たものを短期間覚えておくこと」は日常生活上欠かせない脳の機能です.多くの人では絵や写真でも文字化して記憶します.ダウン症のある人はこの短期記憶や言語変換がとにかく苦手なのです.短期記憶はまた言葉の獲得にも影響しますし,発音やコミュニケーションにもマイナスの影響をします.ですから,ダウン症のある人との会話の場面では①普通のスピードで落ち着いた言い方で話す.②あまり長い言葉を話さない.③返事は多少時間がかかるのを待つ.ことが大切です.コミュニケーションについて,私はその他に3つの心がけをしています.①複数のメンバーと会話している場合,例えば本人と母親と私が外来で面接する場合などで,母親と私の会話も本人がわかるスピードで短い内容の会話をするようにすること.②視覚情報すなわち,絵やジェスチャーを交えたコミュニケーションにより内容の記憶を助けたり強化すること.③相手の言葉が聞き取れないとしたらそれはこちらが悪いと思うこと.会話をしていて,相手の言葉が聞き取りづらかったりよくわからない場合,「上手にしゃべれないあなたが悪いのだ」とするのは不公平だと思うのです.「わかってあげられないこちらが未熟なのだ」と思うこと.コミュニケーションは双方向性のものですから,この気持ちが解決のヒントにつながるかもしれません.


4 長期記憶はばっちりだけど..


 物事を長いこと覚えておくこと,記憶というとむしろこちらのイメージですね.もちろん身の回りに起こった全てのことを長く覚えておけるわけではありませんが,強く印象に残ったことなどはいい思い出も嫌な出来事も良く覚えているのはダウン症のある成人でも変わりはありません.変わりがあるとすれば時間の感覚が欠けるということです.しばしば過去の出来事を現在のことの様に話したり,思いこんだりすることがあります.こんな場合は,本人にとっては過去のことをいつのことか関連付ける要素が役立ちます.「昨日」や「今日」,「去年」などという言葉を加えるとどうでしょう.実は中国語には時制がなく代わりに「昨天」「明天」などという言葉すなわち「昨日」と「明日」を入れることで過去と未来のことは表現しています.ですがこれは少し抽象的で実はあまり使えません.こんな時思い出すのが長嶋さん(一茂さんではなくてパパのミスターの方です)の有名なジョーク(たぶん作り話と思いますが)です.学生時代,英語の試験で「I live in Tokyo.」を過去形に直しなさいとの問題に彼の解答は「I live in Edo.」. ミスターは時制を超越するのですね.この具体性がダウン症のある成人での過去の記憶の整理や表現に使えるのです.「それはあなたが初めて地下鉄に乗った時の話でしょう?」とか「アパートの3階に住んでいたときのこと?」こんな風に助け舟を出すと「そうですよ」といってお互いにすっきりすることがあります.


5 独り言


 「良く独り言を言うようになってなんだか心配です」ということで受診する人もたくさんいます.どこかに書いてあるのでしょう「精神病では独り言が増えます」的なことが.ダウン症のある人では確かに独り言を言うことが多いようですが,しかもその内容がまさしく「統合失調症」の特徴の様であるかに思えますが.まず,ほとんどが病的なものではありません.誰かに不愉快な言葉を投げかけれた後などは,気が付くとその言葉を何度も思いだし,「ふざけるな!」ぐらいの言葉がついつい口に出ることは誰にでもあることです.漫画を見ていて電車の中で思わず笑ってしまい気恥ずかし思いをすることも良くあるでしょう.


 頭の中でこれからスピーチすることをシミュレーションしていて,それが口に出てしまう.あるいは演劇の登場人物になった状況でセリフなりナレーションが口に出てしまうようなことがダウン症のある人ではしばしば起こります.そればかりではなく,さっき言い返そうと思ったけれどうまく言葉が出なかったので胸に飲み込んでいた言葉が独り言として出てくることも多いです.不快な内容であること,独り言をしていることを場にそぐわない行動と認識できなことが外来受診する主な理由ですが.独り言の内容が不愉快な言動であったりしても,よく話を聞けば理由がある場合(他人から嫌な行為を受けたなど)は精神病的なものとは違います.公衆の場での聞こえよがしな独語があるとすれば,それが不適切な行動であることを認知する力が足りないためです.「子供ならまだしも」といいたくなるような行為は彼らの知的レベルが4-11歳であることを考えると納得すべきことです.ですから,同伴者はさりげなく本人に不適切であることを気づかせてあげるようにするとよいでしょう.私たちが独り言を問題視するかもしれないのは大声で攻撃的な言葉を繰り返す.長期間に及ぶ,場所柄をわきまえない場合などです.


6 ルーチンとこだわり


 毎日の行動パターンが同じであることは安心や充実感をもたらします.五郎丸さんのキック前の動作として有名になったルーチン.パーフォーマンスは成功するために心を平静にする効果があるのですね.しかし,人によっては少しこだわりが出てくることもあります.「普通そこまでやるか?」というようなことはダウン症のある人では行う場合があります.朝食を食べるのと髪をとかす順番が変わると,やり直しをすることなどです.ただそうなると学校に遅刻してしまいます.また,嗜好や服装に関する頑なさなどが発揮されることもあります.自己表現でもありますが,時に社会常識を逸脱することもあり困ったことにもなりえます.模倣することもダウン症の性向の一つと言われていますが,悪いモデルがあると困ったことになります.夜更かししてゲームをする習慣がついたり,自傷行為を始めたりすることがあります.また,恐怖症に発展したり,ルーチンを守ることにこだわるあまり肝心の目的を常に達成できないような状況となる場合は修正が必要です.ルーチンやこだわりは誰でもあることです.基本的に咎める対象とはしませんが,社会生活の支障となるものや健康を害することについてはフレキシブルに対応を考えたいものです.心理カウンセリングなどしてみるとよいでしょう.


 青年期から成人期のダウン症のある人のメンタル面での問題点を要約すると.1)基本的に認知障害特性(4-11歳レベル,短期記憶が弱い,時間の観念がない,など)があり,2)自尊心を涵養する一方でストレスを抱えやすく構造が,うつや退行様症状の発症を招く恐れがある.3)行動パターンや嗜好などの定式化を好む傾向とそれからの逸脱に対する抵抗,4)言語コミュニケーション力の乏しさと集団での孤立のリスクなどがあります.日本では教育が大きく変わり,高卒後の社会支援のあり方も多様かつ本人にとってはストレスフルな状況を醸成する要素となりえます.IT機器の進歩とSNSの普及は交友関係のあり方や時間の過ごし方の変容,悪い習慣獲得の助長などをもたらしかねません.社会の環境は20世紀とは全くと変わったといってよいでしょう.メンタルヘルスがダウン症を持つ成人の日常健康管理上の最大の関心事といって過言ではないと私は考えています.


参考文献
長谷川知子監訳「ダウン症のある成人に役立つメンタルヘルスハンドブック」デニス・マクガイア,ブライアン・チコイン著,清澤紀子訳 遠見書房 2013

みんなの広場//こばと会に寄せられるみなさんのお便りをご紹介致します。

白糠郡白糠町 T 美鈴さん(琉維さん 2007.10.28)

運転出来ないけどバイク大好き!


 釧路養護学校中学部2年生になりました。毎日「学校楽しい」と言って通ってます。


 お家が大好きでゲームや動画を観たり音楽に合わせて踊ったりと楽しんでます。


 コロナが落ち着いたら大好きな車やバイクを見たり、遊びに行ったりと以前の生活が送れるようになるといいですね。

札幌市東区 S 奉子さん(郁子さん 1970.11.16)

GHでなかまができました


 我が家の長女郁子は現在51歳です。肥満と甲状腺の少しの異常、皮膚の弱さはありますが、元気で毎日を送っています。


 平日、日中は通所施設「ジャンプレッツ」で卓球、バスケット、運動器具を使っての運動、時には調理等もあります。毎年クリスマスプレゼントとしていただいてくるミニアルバムにその様子が写されていて家族で楽しんでみています。


 現在の生活の場は10年程前に入居した同じ法人のグループホーム「マーガレット」です。スタート時は週末帰宅し週あけに戻るスタイルでしたが今は夏・冬休みに数日帰るようになりました。グループホームではお互いに気をかけあったり、夜には夫々の個室があるにも拘わらず居間で二人枕を並べて寝るなかまができたようです。コロナ禍で今はできなくなりましたがそれまでは月1回親子でお気に入りの店でランチをする楽しみもありました。


 生きるために制約の多い今ですが心静かに明ける日を待ちたいと思います。

函館市 Y 梢さん(煉汰くん 2013.5.7)

初めての書道


 冬休みに初めて書道に挑戦しました‼️


 筆で書くのは難しそうでしたが、思ったより楽しみながら今年の干支『とら』と書けました。


 4月からは3年生になります。無理なく楽しんで通ってくれたらな。と思っています。

函館市 H 茂美さん(茜さん 2014.11.22)

盲学校に入学して


 視覚障がいと知的障がい等をあわせもつ重複学級の小学部に在籍しています。自宅から近く、地域の中で育ってほしいという望みが叶った入学でした。


 毎日張り切って徒歩で登校しています。1年生は5時間授業で下校は午後2時過ぎになります。デイに行く日もあるので疲れ気味の日もありますが、運動量が格段に増え体力がつきました。時間割りは、生活·自立·課題·遊び·体育·図工·音楽があります。クラスは少人数ですが、体育·図工·音楽は上級生と合同で行い、給食も一緒なので交流も多く楽しそうです。生活·自立·課題は今の茜の成長に合った身支度や運動、型はめや絵本読み等の課題に取り組んでいます。


 学習発表会では、一人で舞台に立ちセリフを言ったりダンスをしている姿を見て成長を感じ、とても嬉しかったです。


 一度も嫌がらずに登校し、下校時には嬉しそうに身振り手振りで学校での出来事を報告してくれます。そんな姿を見て茜に合った環境だと実感しています。

伊達市 I 希さん(陽向(ひなた)さん 2011.12.2)

いくら丼に釘付け!


 コロナ禍が少し落ち着いていた12月に、お友達家族と函館に行ってきました!


 大好きなイクラ丼に釘付けで全然カメラ見てくれません(^-^;


 帰ってきてから毎日のように『お休みに温泉行って~!泊まって~バイキング!オッケー?』と催促されています(笑)


 落ち着いたらまた行こうね!

釧路市 D 悦子さん(花歩さん 1993.3.8)

天使病院外木先生の診察を終えて


 去年の8月20日に釧路日赤病院で、札幌天使病院の外木先生の診察を受けました。午前中30分きざみで何人かの相談を受け付けるということで、毎年受診しています。予約時間等は、日赤病院小児科から直接連絡が来て調整できます。


 数年前、小鳩会を卒業されたダウン症のある方とお母さんに偶然お会いする機会がありました。退行現象が現れてどうしていいか分からず、外木先生に何とかつながりをもって、診ていただきたいと思っているということでした。後日、外木先生から「限られた時間なので、数人になりますが釧路で診察します」というお返事があったという連絡があり、20代の我が家の娘も30、40、50代のダウン症のある方々と一緒に診察を受けました。診察が終わってから、先輩お母さん方と食事会をして情報交換をさせてもらい楽しかったです。


 今回は、会長の三好さんから案内のお葉書が来たので、幅広く皆さんに参加を呼び掛けることができ良かったと思います。数人の高校生の方も診察を受けていて、待合室でいろいろお話することができました。


 医療と繋がることは大事と思い、緊急な間題ではないような症状のことも、いろいろ相談させていただきました。娘の場合、肥満がなかなか改善できず、外木先生から「いろいろな取り組みで日々努力しましよう」というアドバイスをいただいていましたが、今回は「立っているときは重力で下に下がっている脂肪が、眠って横になると内蔵や肺を圧迫し、睡眠時無呼吸症候群になったり、体調を崩すこともある」ということを教えていただきました。診察を終え待合室に戻り、次の方に伝えると「もう夜は呼吸器を付けて寝かせています」というお返事でビックリしました。真剣に取り組まなければ・・・と痛感しました。


 咋年、知り合いのまだ若いダウン症の方が亡くなりましたが、成人期はなおさら健康面を丁寧に見守る必要があるように思いました。外木先生は、毎年日赤病院に来ていただけるようですから、気になることがあったら受診することをお勧めします。

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