「こばと」227号


表紙の写真//会報「こばと」表紙写真のエピソードをご紹介

苫小牧市 W 優華さん(結衣さん 1990.1.12)


 我が家のニコニコお嬢さん♬、新篠津高等養護学校を卒業してはや12年!三十路の女に突入しました。


 生まれてから、今まで、そして、養護学校時代!先生方、クラスメイト、沢山の皆さんに親子共々、助けていただきました。高等養護学校の寄宿舎生活での3年間は、いろいろなことを学び経験、成長し、本当に充実した日々を過ごしました。感謝以外の言葉は、見つかりません。3年間の送迎距離?○○万キロ、事故もなく、吹雪に遭難することもなく(笑)無事に終えられたこと、本当に懐かしく思い出します。


 そして、現在、ふれあいらんどに、毎日、楽しくニコニコ元気に通所しています。30年前、生まれたときには、想像もできない日々です。今は、工賃をもらって、家族にごちそうするため、買い物に行くのを楽しみにしています。 まだまだ、体重は、重いのですが、念願の10キロダイエットに成功し、少し身軽になることができ、あちこちの不調もなくなって、喜んでいます。


 最近、親子そろって、物忘れや今まで、できたことが、できてない?と不安になるときもありますが、この笑顔が、少しでも長く続いてくれるよう、日々大切に過ごしていきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

〜各分会の過去のクリスマス会の様子から〜

苫小牧分会

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釧路分会

帯広分会

特集記事//会報「こばと」今号の特集記事

前号に引き続き、外木先生に『ダウン症の生涯を通しての健康管理について』連載していただきます。
今月号は、外木秀文の"学童期の一般管理について"です。

ダウン症の生涯を通しての健康管理について―14

天使病院小児科医師 外木秀文


IV 学童期


パート2 学童期の一般管理


 ダウン症のお子さんの学童期の健康管理についてお話をします.


 当たり前の話ですが,学童期に子供たちは学校に通います.ダウン症の子供たちの就学状況ですが,この20年間で大きく様変わりしました.


  1)就学猶予をする児童がほとんどいなくなった.
  2)普通学級に入学する児童の比率が低下した.


 私がいる札幌ではどうでしょう.半分以上のお子さんが特別支援学級でスタートするように思います.2-3割の方が特別支援学校,普通級は10%くらいでしょうか?


 学童期すなわち小学校1年生から6年生までの時期の子どもたちの健康管理を考えるときに学校生活の占めるウェイトが大きいことになります.その中で,医療の果たす役割がありますが,やはり定期的な通院は必要です.以下に具体的なポイントを書きとめます.


① 新生児期や乳児期に診療された内臓合併症がある場合はその専門的診療の継続が必要です.具体的には,先天性心疾患(手術をした場合,あるいはしていない場合でも),消化器疾患(鎖肛や十二指腸閉鎖等の手術後),未熟児や低出生体重児で生まれた場合,一過性骨髄異常増殖症や急性白血病などの血液疾患,あるいはてんかんなどのけいれん性疾患などです.それぞれの専門的な施設で定期的な検査や診療を受ける必要があります.これらについてはそれぞれの専門の先生に通院する頻度や日常生活並びに学校での生活や学習,運動などの制約の有無について指導を得る必要があります.しっかり相談しましょう.


② 精神運動面の発達の著明な遅れため,あるいは身体的な合併症のために,いわゆる重度心身障害あるいはそれに準じた状態に甘んじている方も少なくありません.自力で歩行が困難であったり,座位を取るなどの姿勢の保持が不可能な場合,自ら経口摂取ができない場合,排泄に支援が必要な場合,痰が絡んだり唾液の嚥下が困難で呼吸に支障が出る場合など医療的な支援が必要となる場合があります.このような場合は学校における具体的な指示を適宜与える必要があります.また,定期的に医師と学校の教諭や養護スタッフと親が面接し,3者で学校での児のケアを話し合う必要があります.


③ 身体的な一般的健康診断
 一般検診は2つの視点で見ていく必要があります.かかりつけ医であったり,主治医とされる医師の役割になります.1つは身体的な合併症の早期発見です.
そのために私は年に2-3回(夏季・冬季の休みの時などを利用して),最低でも年に1度は面接を行います.身長と体重,頭囲を計測し,通学や帰宅後の児童館やデイサービスなどの利用状況あるいは塾や水泳教室等の習い事の参加状況,遠足運動会等行事への参加状況を確認.自宅での食事摂取状況や余暇の過ごし方などを聞き取ります.その際には本人と言語コミュニケーションをどのレベルまでとれるかもチェックします.血液検査は年に1回は行いたいものです.貧血がないか,白血病を疑うような病的白血球の出現や血小板の減少がないか,甲状腺の機能に問題はないか,体重の増加傾向があるなら,コレステロールや中性脂肪の増加がないか,肝臓機能に問題がないか,腎機能あるいは尿酸値の異常がないかなどを調べる必要があります.他の施設で定期的に血液検査を受けているような場合はそのデータを定期診療担当の医師にも知ってもらい,不足している検査を追加するとよいでしょう.学校検尿が毎年ありますから,そちらはしっかり受けてください.異常が出て精密検査が必要となれば,早めに担当の先生に相談しましょう.甲状腺の異常や尿酸値の増加はダウン症に多い問題です.必ず検査を受け,早めの対応を考えましょう.また,肥満傾向も出やすいので,必要であれば栄養や食事の対応と学校・放課後の過ごし方も考えてみましょう.


④ 精神面の健康診断
 一般検診でもう一つのポイントはメンタルヘルスのチェックです.小学校に通うダウン症の子供たちは概して身体的にもメンタル面もあまり大きな問題がない時期にあると思われます.しかし,個人個人の身体能力や運動神経,体力あるいは知的能力には差がありますし,環境も普通級から養護学校まで,場合によっては自宅で勉強する子もいるでしょう.こちらもさまざまです.ダウン症の子が学ぶことはたくさんありますが,同時にストレスもたくさんあります.子供から大人になる過程で心の成長が求められる時期ですから,この時期のメンタル面の評価がとても大切だと思います.


 知的能力がのびると判断力と予想する力が向上します.自身の能力と他者との比較も当然意識されるようになります.次第にわかってくる自分のことを,肯定的にとらえ自己愛をはぐくみ他者に心を開ける安定感のある人格基盤を形作る大切な時期であるとも言えます.


 最後に2011年,アメリカで行った調査の結果を参考に載せました.


 12歳以上のダウン症の方に聞いたアンケート調査です.ほとんどが10代と20代の若者です.小学校を卒業した人たちが自分や他人をどう見ているか?を尋ねたものです.


 表を見るとダウン症の方たちがとても肯定的に自身や他人との人間関係を評価していることがわかります.この精神基盤が小学校時代に培われたものだと考えられますから.これはとても素晴らしいこと思うのですが,いかがでしょうか.


参考文献

Skotko BG, Levine SP, Goldstein R. 2011. Self-perceptions from people with Down syndrome.
Am J Med Genet Part A 9999:1–10.

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